2008年12月7日日曜日

石積みの屋根-山形県鶴岡市②

何度か鶴岡を訪れながら、これまで行ったことのない「丙申堂」を見学しました。ちょっと抹香くさい名称ですが、お寺の類ではありません。明治29年丙申の年に建てられた、鶴岡の豪商、風間家の居宅です。800坪弱の敷地に、4つの蔵と19の部屋を持つ広壮な屋敷です。
 
管理人さんの話では、風間家は鶴岡藩御用商人として、呉服などを手広く商っていたそうですが、明治以降金融業に転じ、現在の庄内銀行創立の一角を担うまでに成長しました。玄関口右手には、当時のお店部分と看板などの小道具類が残されています。
 
私が最も興味を持ったのは、屋根の葺き方です。屋根に杉板を敷き詰め、その上に杉皮を重ねるように葺き、最後の仕上げに、赤ん坊の頭大の石を隙間なく置いてあります。屋根の置石の数は、何と4万個。そういえば、映画「蝉しぐれ」のワンカットに、同じような屋根の建物がありました。
 
冬場、日本海から吹き付ける横なぐりの風雪に耐えるためには、これ位のことをやらなければならないのかな、と思いつつも、気になるのは、それを支える躯体です。『その秘密は、台所板の間の大黒柱と屋根を支える梁の構造を見ていただければ分かります』と言われたものの、素人にはよく分かりません。中越沖地震では、庄内も震度4の揺れに見舞われましたが、ビクともしなかったそうです。
 
後で地元の人に伺ったら、『ああ、俺達の子供の頃は、どこの家もあれが普通だったね。瓦なんて洒落たものは、余程の家じゃないと使わなかったからね~。河原に行けば、石はタダで拾えたし。』とのことでした。それにしても、十数年に一回は、石の積み下ろしと洗浄→杉板と杉皮の葺き替え→石の再積み上げ、の作業が必須です。すっかり便利癖の付いた身には、想像するだけで気が遠くなります。

 

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