2008年12月7日日曜日

奈良の一刀彫

18の歳まで育った奈良に冠婚葬祭などで偶に帰ると、不思議な違和感を覚えることがよくあります。
●この通りはこんなに狭くて、軒高もこんなに低かったかな~?
●この辺りに、確か池があったはずなのに・・・?
記憶の奥底に刷りこまれている映像と、目の前の映像とが微妙にずれて、頭のどこかが反応しているんでしょうね。

奈良市阿字万字町(「あぜまめ」と言う町は知っていたのですが、こんな字を当てていたとは!)にある「なら工芸館」を訪問した時、伝統工芸の「奈良一刀彫」に関する私の知識が、全く限定的なものであったことを思い知りました。私が小さい時から知っている「一刀彫」は、能楽に題材をとった極彩色の木彫人形や翁像、小さいものでは干支像のことだと思い込んでいました。

しかし、工芸館の中に、実物に近いほどの大きさの堂々たる雄鹿が展示してあって、館長の神箸さん(この方は一刀彫の名人でもあります)の話では、これも「一刀彫」だと仰るのです。要は、奈良で育った伝統的な木彫技法と彩色技術を用いたものを「一刀彫」と総称しているようです。この鹿に近寄ってよくよく見ると、見事な鑿跡の上に、確かに微妙な彩色が施されています。その濃淡の具合が、猛々しい雄鹿の毛足を髣髴とさせています。

最近はお雛様の一刀彫も人気だそうですが、当然ながら値段も相当なものでした。

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